奥田英朗「最悪」を読んで
奥田英朗「最悪」を読んで
サウスバウンド、オリンピックの身代金、と奥田英朗さんの作品を読んで次に読んだのがこの「最悪」です。
あらすじ
鉄工所社長の川谷、銀行員のみどり、無職の和也の3人の目線で物語は進んでいきます。
川谷は決して多くはない収入でありながら温かい家庭を持ち、日々の仕事の忙しさもはねのけながら、不況を生きぬく下請け企業の社長として立派に働いています。
みどりは高給な職業である銀行員として仕事につき、同僚にも恵まれ不自由なく暮らしています。
和也は無職ながらもカツアゲとパチンコで食べて働きもせずその日暮らしで生きています。
しかし物語が進むにつれそれぞれの主人公がそれぞれに最悪の道を通って転がり落ちていきます。
そんな最悪な3人が交わった時、物語は急展開を繰り広げ始めます。
見どころ
見どころはやはり,それぞれの主人公の心情変化だと思います。
はじめはどの主人公も仕事が忙しいとか、上司がうざいとか、お金が欲しいとか抱えていたものは小さな悩みでした。
その後不幸が積み重なった結果、それぞれの悩みはどんどん深刻なものになり、それぞれの主人公にも余裕がなくなっていきます。
3人が交わりここまでためてきた悩み、余裕のなさが爆発するわけですが、ここに至るまでのそれぞれの心情変化がとても繊細かつ、リアルに、生々しく描かれていて読んでいて心が締め付けられるような感覚を味わうことができます。
「うわ~、最悪やん」と思わず言ってしまうこと間違いなしです。
そしてやはりこの作品の見どころは最後の三人が出会ってからのシーンでしょう。
全員、余裕がない中で、正気と狂気のはざまをさまよいながらのやり取りは迫力満点です!
さて、3人のうち「最悪」だったのは誰だったのでしょうか。読んだ後も考えさせられる作品です。
感想
川谷さんがかわいそうだった。世の中の中小下請け企業がこんなにハードでないことを信じています。